あたしが言葉を発したのか、それとも目の前に立つ彼が呟いたのかは、わからなかった。


ただ、目前には紛れもなくあたしの弟のシュウが居て、おまけに割烹着姿。


多分、ここで働いているのだろうとは、働かない頭で思ったこと。



「…姉、ちゃん…」


どれだけ探しただろう。


どれだけ苦しめられてきただろう。


コイツの所為で、と思わない日はなかったのだから。



「…姉ちゃん、何で…?」


震えるような声色に、だけどもあたしは答えることすら出来なかった。


ジルが先ほど言ってた「大丈夫だから。」の言葉の意味を今更理解した気がしたけど、でも、正直今はそんなこと、どうだって良い。



「俺、帰らないからなっ!」


そんな言葉で戸惑いは次第に怒りに変わり、あたしは唇を噛み締めた。



「ふざけんなよ、馬鹿野郎!
アンタの所為でね、アンタの、所為でっ…」


そこまで言って、涙を流している自分に気が付いた。


拳を握り締めてみても、それ以上何か言うことも、殴り掛かることも出来ない。


ただ、もうすぐあれから2年経とうとしていること、そして生きたシュウと再会したこと。


それだけは、紛れもない事実だった。