「ノートと家来になるのと、どう
見たって比重が…」

抗議しかけたら、振り向きもしな
いでスタスタと階段を上られて急
いで横に並んだ。

くそっ…カバンが重い。

「今はやるけどさ、もう
明日からはやらないからね」

私がそう言った途端、黒川はピタ
ッと立ち止まって眼光鋭く私を睨
みつけた。

「なんだと」

こっ、怖い!
整った顔立ちだから、よけいに迫
力がある。
それまで目一杯抗議してたつもり
が、その迫力に押されて借りてき
た猫みたいになってしまった。

「ぃ、ぃぇ…カバン持ちぐらいは
やらせていただきますよ…」

ああーー我ながらなんて卑屈なん
だろう。
ボソボソ言い返すのがやっとだな
んて。

「カバン持ちだけで済むの思って
んのか?」

シルバーフレームのメガネの奥の
冷酷な瞳がニヤッと笑った。

「えっ…」

これだけでもかなりストレスなの
に、まだなんかさせる気?

「朝は俺様を待ってカバン持ちし
ろ。昼はちゃんと弁当を差し入れ
ろ。放課後は俺様が帰るまで待っ
てろ」

どうだ、と言わんばかりの笑み。

あれ?でもなんか変だ。
これって…。

「あのさ、それって家来って言う
より彼氏彼女じゃない?」

…王子様の笑みが消えた。

瞬間、ポケットに入れてた手が私
の頭を思いっきりぶん殴ってた。

「痛ぁっっっっ!!」

まるでお笑い芸人のツッコミみた
いに、パーンと小気味良い音。

「アホかお前は」

そう言うなり、またスタスタと歩
き出して私はふと気づいた。
黒川の耳が真っ赤になってる事を

…。