黒川はそれを興味なさそうに
チラッと見ただけだった。


「バカかお前は」

「えっ!?」

「それぐらいできなくてどうする」

「………」

おっしゃる通りです。私はバカで
すよ。
でも早く教えてくれないと、授業
が始まってしまう!

こうなったらプライドもへったく
れもない。

私はめげずに食らいついた。


「あの、ここの、59ページのさ…」

言いかけた時、授業開始のチャイ
ムと共に小山が入って来た。

えーーー!早いよ!
せめて後1分待ってよ!


「お前ら席につけー!」

ああ…なんだか小山は機嫌が悪そ
うだ。

私はこれからクラスのみんなの前
で、ネチネチと説教され
恥をかくことに……。



その時。
バサッと頭上からノートが降ってきた。


「…?」


振り返ると黒川が自分の席に戻っ
て行く後姿が。

もしや…ノートを貸してくれた…?


慌ててノートを覗き込むと、教科
書の問題の答えがびっしりと
かつ、几帳面に綺麗な字で書き込
まれていた。


ありがとう…!!
私は心の中で拝んだ。

さっきは、やな奴だと思ってごめんなさい。
黒川君、あなたはいい人だったんですね。