「それは見た」

「えー、これじゃないの?」

また取りに行かなきゃいけないの
かぁ…。
面倒くさいなあ…なんでもいい
じゃない。



……ブツブツ言いつつ
気がつくと、私は必死で棚を
物色していた。

えーとこれは英語だし、こっちは
ハングル文字?
えーとこれはなんだろう…。


下段の棚をごそごそやってると、
スラリと長い脚が隣に並んだ。

「パンツ見えてるぞ」

「へっっっっ!?」

私が慌ててスカートを押さえて立
ち上がると、黒川が笑った。

大魔神らしからぬ笑顔。
いつもは冷酷な瞳が、優しそうに
微笑んでる。

その時、ドキッと私の鼓動が跳ね
た。
えっ?なんで…?


「お前って変な奴」

でもそれは一瞬の出来事だった。
もういつもの黒川に戻ってる…。
今の笑顔って、素の顔だったよね


「ねえ、なんでフランス語な
の?」

辞書はみつかりそうにもなかった
けど、なんとなく知りたくなった

「親戚のおじさんに翻訳してくれ
って言われてる」

「えっ、フランス語できるの!?



「まあな」

まさか黒川がここまで天才だった
なんて…。
もはや何をしても勝てる気がしな
い。
私はため息をついた。