「なんか早速噂になってるよ、由
比と王子」

昼休み、私は智香と一緒に校庭の
隅っこの芝生の上でお弁当を食べ
ていた。

今日は家来初日だと言う事で、黒
川にお弁当を差し出さずに済んだ
けど、また何言われるかわかった
もんじゃないので、こっそり教室
を抜けて来たんだった。

「あーーやだなあ…黒川ファンに
呼び出されそうでさぁ…」

あの後、教室に入るとなぜか男子
は爆笑の嵐だったけど、女子に至
っては私を睨みつける子もいた程
で。

「そうだねぇ…特に藤本さんは、
王子ファンだろうからねぇ…」

智香は呑気に卵焼きを口に放り込
んだ。

藤本さんかぁ…あんまりしゃべっ
た事ないけど、女子の学級委員で
気の強い子ってイメージ。

黒川の、頭も良くてイケメンって
所が好きなんだろうけど、奴のド
ス黒い性格を言ってやりたいぐら
い。

「なんでノートなんか借りたんだ
ろ、あの時の私」

もうお弁当を食べる気にもなれな
い。ごろりと横になって空を見上
げる。
空はあんなにも青いのに…。

フーッとため息をついた途端、ス
カートのポケットの中の携帯の振
動で飛び上がった。