「あれ、吏遠?」
「あ、乃衣」

乃衣はあたしの友達。女子の中では一番仲がいいかな。
バスケ部のマネージャーで、侑士を気にしているらしい。

「鈴木君たちは?」
鈴木は侑士のこと。
「んー……あたしを置いて逃げやがった」
あたしが言うと、乃衣は笑い出した。

「ほんと、仲良いよね」
「仲良くないよー」
龍矢の机に座ると、窓を開けた。春の少し霞んだ景色は結構好き。
「ねぇ……鈴木君は……もうバスケやらないのかな?」
「さぁ?あたしたちそういう話ししないからなぁ……分かんないよ」

本当は……やりたいんだと思う。でも……タイミングがつかめないんだ、きっと。

何気なく外を見ると、龍矢と侑士を発見。目立つからすぐにわかる。
二人が一緒って目立ちすぎる。あたし……よく二人と居られるなぁ。
あたし凄い。

「侑士ー!」
「吏遠!早くこっち来いよー!」
電話中の龍矢を笑いながら指差す侑士。
あの二人……あたしが説教されてる間に何やってたわけ?
「絶対に動かないでよー!じゃあ乃衣、行くね」

机から下りると、乃衣に手を振った。
「あ、うん。バイバイ」
窓の外を気にしながら手を振り返す乃衣。
ごめんね、乃衣。
あたし……侑士がバスケ部に戻るように言ってあげられないや。
今のこの儚い日々を……三人の時間をなくしたくないから……。