「小田先生、お電話です」
英語の小林先生が笑いと戸惑いが混じった顔で小田先生に言った。
「待ってるんだぞ!」
ラッキー。誰か分かんないけど、ありがとう!待てって言われて待つような生徒は居ないよ。

「誰だ?」
「……大釜さんって方です」

え?オカマ?なわけないか。
今のうちにバレないように素早く慎重に小田先生の席を離れた。
「べーっだ!」
あかんべをして職員室を出ると、背伸び。
「あーあ……」

静かな廊下に響くあたしの声。微かに聞こえる吹奏楽部の音が余計にあたしを虚しくさせる。
職員室の前から早く離れたくて、何となく足早に歩いていたら、あたしの教室の前まで来た。

問題児のあたしたちの席は一番後ろ。あたしの左隣りの窓側に龍矢で、右側に侑士。
小田先生が席を前にしようとしたらしいけど、担任じゃないから無理。