放課後のこの静かな感じがあたしは嫌い。
ついさっきまでは女子生徒のはしゃぐ声や、かったるい一日を終えて自由の身になった男子生徒の騒ぐ声が聞こえたのに、今は不自然なくらいに静か。

みんな部活へ行ったり、遊びに行ったりしてるのに…何であたしは先生に説教されなきゃいけないんだろう?

「聞いてるのか?杉山!」
「聞いてまーす」

もとはといえば、あたしじゃなくてあの二人が悪いのに……何であたしが説教されなきゃいけないのか全く分かんない。
新学期早々、小田先生に捕まるなんて……一年間不安。
小田先生は口煩くて、気に入らない生徒がいると何もしていないのに意味不明な理由で呼び出して説教するからみんなに嫌われてる。

こんな先生に説教されても……聞く気にならない。
あたしも気に入らない生徒の一人だし。

ふと窓の外を見ると、圧倒される位に綺麗な桜が咲き誇っていた。職員室から観る桜は校内で一番綺麗かも。
説教されるのも悪くないかも。

「杉山!お前は自分が何したのか分かってるのか!?」
「わかりません」

あたしの言葉に小田先生は噴火寸前。顔が真っ赤。
でも、あたしは本当に何にもしてない。
ただ、掃除の時にほうきを構えた龍矢(りゅうや)に侑士(ゆうし)が雑巾を投げて、打ったのを取りそこねただけ。
運悪く、教室に入って来た小田先生の顔に雑巾が見事にヒットしただけのこと。
つまり、掃除道具野球してただけ。