「…じゃ、戻るか」


ゼンが、まだ少し肩を揺らしながら、一歩を踏み出した。


…なのに、ゼンはすぐに立ち止まってしまった。


「…ゼン?」


私が名前を呼ぶと、ゼンは一瞬黙り込んでから、ゆっくりと口を開いた。


「…俺、まだ寄るところあった。レキと先戻ってて」


「は?どこ行…って、ゼン!」


レキの呼びかけに答えることなく、ゼンは颯爽と駆けて行ってしまった。


私とレキは、呆然とその後ろ姿を見送った。


「…なんだぁ?アイツ」


レキは眉をひそめてそう言うと、すぐに表情を明るく変え、私を見た。


「まぁいっか♪ララちゃん、船に戻ろ」


「あ…うん」


レキ…百面相。


ころころと変わる表情が面白い。


「そうだマスター、"ラー"に壊された扉は?」


私が思いついたようにそう訊ねると、マスターはああ、と返事をした。