震えがおさまった私は、小さく頷く。


「ありがとう…ゼン」


「…どういたしまして」


ゼンは口角を少しだけ上げ、微笑んだ。


そんなゼンの腕を、レキはがしっと掴んだ。


「…何」


眉間にしわを寄せたゼンに、レキが涙目で訴える。


「いい雰囲気醸し出してんじゃねぇよっ!俺だって、ララちゃんのこと心配してたんだからなっ!」


「………へぇ」


「お前ばっかり、いつもイイトコ持ってってずりーぞっ!!」


「………そう」


「何だその適当な返事!!」


ぎゃーぎゃーと喚くレキを、いつものように軽くあしらうゼン。


その光景が、今の私にとっては、何よりも温かく感じられた。


「…それじゃ、俺たちは行くんで」


ゼンが、マスターの方を振り向き、口を開いた。


「ああ。ありがとうね、海賊退治もしてくれて」


あんたらも海賊だっけ、とマスターが笑った。