私とゼンの顔を、レキが眉をひそめつつ交互に見た。
「…何?お前らどしたの?」
―――どうもしないよ。
ただ、私が勝手に怖がっただけ。
ゼンは何も悪くない。
むしろ、お礼を言わなくちゃいけないのに。
なのに…
「…そんな顔しなくていいよ」
酷いことをしたにも関わらず、ゼンは怒ることなく私に言った。
「過去は、そう簡単に消せるものじゃないから」
…バレちゃった、かな。
私が、家族を殺された日の記憶を…思い出していたこと。
家族を殺した海賊の姿に…ゼンが重なってしまったことも。
「ゼ、ン…」
「…それと、大丈夫じゃないのに大丈夫って言う癖、やめといた方がいいよ」
優しく、本当に優しく、ゼンの手のひらが私の頭に乗せられる。
「余計に周りが心配するから」
今度は…全然嫌じゃなかった。