「うっ」
他方から聞こえた、別の人物の痛みの声。
船長の胸を、ゼンの剣が貫いていた。
「―――!!」
その光景に、私は思わず目を逸らす。
「…サンキュ、レキ」
「別にー、船長護るのは当然だろ。ってか、お前気づいてただろ」
「…まぁ、レキの姿が視界の端で見えたし」
「何?頼ってくれちゃった感じ?」
「………」
「…はいはい、調子に乗りましたー」
ゼンとレキのやりとりが、耳に届く。
吐き気と目眩で、うまく呼吸が出来ない。
「つーかさ、そいつどーすんの」
「急所は外した。…あんたらさ、この船長を連れてさっさと消えて」
声だけでも伝わる、ゼンの気迫。
海賊側から、喉を鳴らす音が聞こえたかと思うと、一斉に動き出した。
「うわあぁぁ!!」
「撤収だ!! 船長がやられた!!」
「早く逃げろっ!!」