一際大きな音がして、片方の剣が弾かれた。


その剣が地面に突き刺さると同時に、聞こえた呻き声。


「―――うっ」


その場に片膝をついたのは、相手の海賊。


押さえられた片腕からは、じわりと赤い染みが広がっていく。



苦痛に顔を歪ませた相手の目の前で、ゼンは立ち止まった。


「…俺の勝ちだね」


相手を嘲笑うわけでもなく、ゼンは冷たく言った。


「ふっ…ざけんな…!」


怒りを露にした相手は、ギロ、とゼンを睨む。


ゼンはまだ、冷たく見据えたままだった。



そのとき、私の瞳に、信じられない光景が映った。


海賊のうちの一人が、いつの間にか、野次馬に紛れゼンの背後に回り込んでいた。


野次馬は、気づいていない。


その海賊の手元に光る…小さな短剣に。



それを見た瞬間、嫌な予感が頭をよぎった。