―――どくん。


ゼンの表情に、体が震えた。



憎しみのこもっている裏で、哀しみが含まれたような瞳。


『"ラー"絡みだと、ゼンも容赦ないのよね』


不意に思い出した、ニーナの言葉。



私みたいに、ゼンも"ラー"に…何か深い感情を持っているの?


「…ゼン」


私がぽつりと呟くと、ふたつの影が、同時に揺れた。


瞬間的に、ゼンと相手の距離が埋まり、剣と剣がぶつかる音が響く。



周りにぞろぞろと集まった野次馬から、感心の声が上がった。


私も、思わず息をのむ。


―――速い…。



幾度となく重なる、ふたつの剣。


その度に響く、嫌な金属音。



私は、そんな二人の姿を、目で追うのに必死だった。


…これで、はっきりわかったよ。


ゼンは私と剣を交えたとき、全く本気なんかじゃなかったってこと。