「…何。あんた、あっち行きたいの?」


少しだけ眉をひそめたゼンに、私は思いきり首を横に振る。


すると、ふっと表情を和らげるゼン。


「…なら、大人しく待っててよ」


そう言ってから、ゼンは海賊たちに視線を戻す。


「ここじゃ狭い。外でやろう」


その提案に、相手はフン、と鼻を鳴らした。


「どこだっていいぜ?ぶったぎってやんよ」


ゲラゲラと笑う海賊を見て、私は顔をしかめた。


…こんなやつに、ゼンが負けるわけない。


信じよう。


―――ゼンを。





酒場の外で、ゼンと相手の船長が向き合う。


私とマスター、それに他の海賊たちは、酒場の入口付近でその光景を見守った。


通りかかる街の人たちが、何事か、と徐々に群がってくる。



じゃり、と砂が擦れる音がした。


ゼンが、小さく構えをとる。



その表情は、真剣だった。