さっきの海賊の船長が、席を立ち上がった。


その視線が、ゆっくりと私に向けられる。


「…そのお嬢ちゃんを置いていけ、小僧」


舐めるようなその視線から逃れるように、私は素早くゼンの後ろに隠れた。


―――イヤ…。


私は、ゼンの服をぎゅっと掴む。


「…それは出来ない」


ゼンがそう答えると、ヒュウ、と短い口笛が聞こえた。


「かっこいいね~。けど…力ずくで奪われたら、文句は言えねぇよなぁ?」


カチャリ、と小さな音が響く。


相手が剣を抜いたことが、見なくても…嫌でもわかった。



船長が戦う気になったことで、周りの海賊たちが囃し立て始めた。


そんな中、私の耳に届いたのは、大きなため息。


「…面倒くさいな」


そう言って、ゼンも腰の剣をするりと抜いた。


「…ゼ、ン…」


私の震える声に、ゼンは小さく振り返る。