背筋を這うような嫌な感覚が広がって、ぞっとした。
誰にも気づかれないように、手のひらをぎゅっと握る。
「悪いけど、酒場は夜からなんだ。出直してくれ」
鋭い口調で女の人…マスターがそう言うと、海賊たちは笑い出した。
その笑い声が、耳障りで仕方ない。
「ねーちゃん、誰に向かって言ってんだぁ?第一、そいつらは客じゃねぇのかよ」
そのうちの船長らしき人物に視線を向けられ、体が強張る。
「…俺たちは客じゃない。今から帰ろうとしてたところだ」
無表情で、ゼンはそう答えると、私の腕を引っ張って出口へと向かう。
「………っ」
マスターが心配になった私は、振り返った。
私の視線に気づいたマスターは、大丈夫とでも言うように、首を振る。
「ちょっと待ちな!」
ガタン、とテーブルが音を立てて揺れた。