顔を上げると、女の人は面白そうに笑った。


「中身は別に、ただの酒なんだけどね。"ルナ"って、深く干渉しないって噂だったからさ」


…そうだよね。

普通、訊くのって失礼だよね…!



私が猛烈に後悔していると、ゼンが私に向かって言った。


「…あんたのせいだけじゃない。俺も注意し忘れてたし」


「…ゼン」


ゼンのこういうところが、いいなぁって思う。


私の気持ちは、少しだけ軽くなった。



―――バァン!!



そのとき、酒場の扉が勢いのいい音を立て、壊れた。


その音に体がびくっと反応し、私は音のした方を見る。


私の隣で、ゼンが瞳を細めた。


「あー、疲れた」


「メシメシ!」


「おいマスター、何ぼけっとしてんだよ!酒持ってこい、酒!」


ぞろぞろと酒場に入ってきたのは、見た目からして…海賊。


"ルナ"じゃない。



………"ラー"だ。