「…"ルナ"です」
ゼンが短くそう答えると、女の人の警戒が解けたのがわかった。
同時に、私の緊張も解ける。
「なんだ、そうだったのかい。せめて、先に一言言ってくれよ」
はは、と笑う女の人に、ゼンは私の持っていた木箱を受け取ったあと、「すみません」と返して続けた。
「…これが、シェイルからの届けものです」
…シェイル?
眉をひそめた私に、ゼンが「街の名前」と言った。
「ああ、悪いね。重かっただろう」
「…何が入ってるんですか?」
ただ単に、私は興味から訊いてみただけ。
…なんだけど、女の人は目を丸くしたし、ゼンは大きなため息をついた。
「…すみません。まだ新人なもので」
ゼンが私の頭を掴み、無理やり下げさせる。
「ごっ、ごめんなさい!」
訊いちゃいけないことだったらしくて、私は慌てて謝った。