―――でも。


「ゼン、お店閉まってるよ?」


扉にかかる小さな看板には、"close"の文字。


そんな私に、呆れた表情を見せるゼンは、面倒くさそうに口を開いた。


「…あのさ、ここ酒場だけど。昼間からやってるわけないから」


「あ、そっか」


じゃあどうするの?―――と訊く前に、ゼンは扉の前に立つと、何の躊躇いもなく押した。


「ゼン!?」


不法侵入とかならないのか、ヒヤヒヤする私をよそに、ゼンは普通に酒場に足を踏み入れた。


仕方なく、私もゼンに続いて中に入る。



カラン、という小さな鈴の音が、店内に響く。


カウンターに立っていた女性が、私たちに気づいて、驚いた。


「ちょっとあんたたち、誰だい!?」


二十代半ばぐらいで、明るい茶髪を頭の後ろでまとめている。


その人は整った眉をひそめ、私たちを睨んだ。



ゼンは怯むことなく、木箱をカウンターの上に乗せた。