◆◆◆
緑の街、フォーグ。
外観も緑に溢れていたけど、街の中もそれに負けないくらいだった。
お店の周りには、綺麗な花々が植えられ、住宅街もガーデニングが凝っている。
表通りも、街路樹で覆われていた。
「すっごーい…」
思わず感嘆の声を上げ、立ち止まってしまった私の横を、ゼンは普通に通り過ぎる。
「あ、ゼン!待ってよっ」
「…仕事終えたら、時間あるから」
はぁ、とお決まりのため息と共にそう言われ、私は渋々と頷いた。
だって、他の土地なんてほとんど訪れたことのない私。
目の前に広がるこの光景が、珍しいの。
…そりゃあ、ウキウキしたくもなっちゃうよね?
「ねぇ、ゼン。他のみんなは何してるの?」
私がそう訊ねると、ゼンは歩くスピードを落とすわけでもなく、前を見据えたまま口を開いた。