「…人間の脚を手に入れたばっかで、ふらふらして倒れられても困るし」
ゼンがすたすたと歩き出したので、私は慌ててその後ろを追いかける。
「も、もう慣れたもん!」
「…どーだか」
言い返す私に、小さな笑みを向けるゼン。
それが無性に悔しくて、私はむすっと押し黙った。
手元の木箱に視線を落とすと、紙に書かれた文字が目に入る。
―――"Lavie"
「ラ…ヴィ、エ?」
無意識に口に出して文字を読んでしまい、ゼンが後ろを振り向く。
「…酒場の名前。これから向かうから」
「え?ゼンも同じ場所?」
私が訊ねると、ゼンは「当たり前だろ」と呟いた。
「仕事が初めてのあんたを一人で行かせたら、何が起こるかわかったものじゃない」
…し、失礼なっ!
「そこまでバカなこと、しないわよっ」