軽くあしらってるゼンだけど、その口元は笑っていた。
ただ単純に、"いいなぁ"って思った。
心を許せる仲間がいるのって、すごく大切なこと…。
「なんてったって、この俺を副船長に指名したのは、ゼンだし!」
どんっと胸を張るレキの得意気な顔を、私は穴があくほど見つめた。
「え!? レキ…副船長だったの!?」
「…知られていないし」
「ララちゃんー!? ゼンも笑うなっ」
わいわいと騒いでいると、凛とした声が響く。
「こーら、そこっ!さっさと準備する!」
ポニーテールを揺らしながら、ニーナが私たちの方へやって来た。
「レキ、船長の邪魔しないでよ」
「はー!? してねぇしっ」
「ゼン。みんな指示待ってるよ」
「…悪い。すぐ行く」
ゼンが船を降りる様子を、ニーナは黙って見送ったあと、私に視線を向けた。