二人の困惑した瞳を、私は交互に見つめ返す。


「…やめて。争う必要なんか、どこにもないよ」


すぐに口を開いたのは、サンだった。


「あるさ。ゼンは俺を憎んでる」


「―――違うっ!」


声を張り上げたゼンを、サンは眉をひそめて見た。


そんなはずない、と言うように。


「…確かに、サンが俺たちを裏切ったことは事実だ。でも…」


「―でもじゃない!だったら、お前は俺を恨んでるはずだろ!?」


声を荒げたサンを、ゼンは悲しそうに見つめた。


「…恨んでなんか、ない」


「じゃあ何だっていうんだ!? 俺は、お前に許してもらえるなんて思ってない!」


サンが大きな声を響かせる度に、その赤髪が僅かに揺れる。


わたしには、ゼン以上に、サンが悲しそうに見えた。


ねぇ、サン。

あなたはまるで―――…



「…俺に、殺して欲しいんだろ?」



わたしと同じ考えを、ゼンが小さく呟いた。