ゼンはいつもの調子で、淡々と答えた。


「俺が海賊を続けるのは、父親の形見の…Queen号を護る為だよ」


その言葉に、嘘はないんだと思う。


でも…何かが引っかかった。


「…その為に、俺は今まで生きてきたんだ」


ゼンはそう言うと、私たちに背を向け、歩き出した。


扉の取っ手にゼンが手をかけようとした瞬間、レキが叫んだ。


「―――ゼン!!」


ゼンの手の動きが、ピタリと止まる。


けどゼンは振り返らずに、扉の方を向いたまま返事をした。


「…何」


いつもと変わらない返答に、レキの表情が悔しげに歪んだ。


「お前はっ…心を開いているようで、そうじゃねぇ!俺たちとの間に、壁をつくってる!」


「…そんなつもり」


「あるさ!! バカにすんなよ!! 何年お前と一緒にいると思ってんだよ!!」


レキの悲痛な叫びに、私は思わず唇を噛みしめる。


「………」


カチャリ、と音が響いて、扉が開いた。


ゼンの手のひらは、しっかりと取っ手を握っていた。