だから。



「…お願い。私を、船に乗せてください」



あの日と同じように、頭を下げる。


…何となく、わかった。


ゆっくりと顔を上げる前に、目の前にいるゼンが…微笑んでいることが。


「…何してんの。早く乗れば」


そう言って、口角を持ち上げたゼンは、すぐに「もう乗ってるけど」と苦笑した。



あの日と同じ言葉を、ゼンはくれた。


それが無性に、嬉しくて。


「あ―――!ゼンお前っ、ララちゃん泣かしたな!?」


ずっと黙っていたレキが、思わず涙を流す私を見て、大声を上げた。


「…あんた、よく泣くよね」


「ゼンが泣かしてんだろバカッ!!」


「レキにバカって言われたくないわよね」


ニーナも口を挟んだことで、一気に場が騒がしくなった。


私は…この大好きな空間に、一緒にいれるんだ。


「ありがとう、ゼン…」


嬉し涙を拭ったとき、私の肩に手を置いたレキが言った次の言葉で、また空気が一転した。