固まった俺の体はやっと動きを許され、

出て行った彼女の後を追いかけた。



エントランスに佇む彼女の肩は少し震えていて、


泣いてる?


その瞬間俺は理性もなにもふっとばして、


思わずその背中を抱きしめていた。




ビクンとした彼女の体。


女の体ってこんなに小さくて、やわらかかったっけ。


頬に触れる彼女の髪の感触が俺の胸の鼓動を早くしている。


こちらを向いた陽菜の顔は涙で濡れていて。



俺…もうダメだ……!



自然と近づく唇。



好きだ。





だけど、途中に頭に浮かんだあいつの顔。

「ハルト!」

カズマの偉そうな、でも大好きな「兄貴」の顔だった…。



そのまま固まった俺の腕を振り払って、

陽菜はタクシーに飛び乗った。