俺はあわてて、簡単に事情を説明したけど、

陽菜は、ただボーっとした顔をしていた。


これはharuのことまでは言えないな。


というより、言葉が出なくなったんだ。



陽菜の口から出た言葉に今度は俺が固まってしまった。




「好き」





静かに、そしてまっすぐに俺を見る目。


俺も完全に固まり続けたまま、でも陽菜の言葉が体に深く染みこんでいくのを感じていた。


いろいろ難しく考えていたことなんて

全部吹き飛ばすくらいの威力をその言葉は持っていて。


そこにあるのはただまっさらの俺の気持ちだけ。



「おれも…俺も好きだよ」



思わず出そうになったその言葉は口から発せられることはなかった。

言えなかったのは、彼女がすっと立ち上がり、

何か言い訳をしながら部屋を飛び出ていってしまったから。



閉められるドアの音を合図のようにして

急に空気が流れ始める。