わずか何秒のはずが、とても長い時間に感じられた。

気が付くと、すぐ目の前で、その職人が仰向けになって、天井を見つめていた。

両手に荷物の取っ手を握ったまま、自分で放す事が出来なくなっていた…。


もうそんな場面は、絶対に見たくない。―


「じゃあ、とにかく作業台車を一緒に運んであげるから、ついてきて。」


浩美はようやく落ち着いた口調に戻った。


「あっ、はい。」

と、新入りは慎重に脚立から降りて

「でもこの脚立はどうすれば…」

と、浩美に聞くと


「あぁ、そっかぁ、とりあえず邪魔にならない所に片付けておこうか…」


と、浩美は辺りを見渡す。