それも無理はない。

目の前で死亡事故をみてしまったのだから……。

― その時、その職人は焦っていた。

作業が大幅に遅れ期日までに間に合わない。

地上十メートルはある鉄骨の上。

今立っている鉄骨の上から反対側の鉄骨の上に行かなければならない。

鉄骨から鉄骨までの距離は約一メートル。

道具と資材を持って下まで降りてから反対側の鉄骨の上まで登るには約十分。

しかし、飛び移ってしまえばわずかの約一秒。

時間に追われていたその職人は、迷う事なく反対側の鉄骨の上に飛び移るつもりだった……

両手に道具と資材を持ったまま、勢いよく飛び出した。