「今日は入るなよ」


「入らないから」


冬の海は、誰もいなかった。


当たり前だよね。


寒いのに、わざわざ来ないよね。


今日はあんまり天気が良くなかった。


それでも、ときどき顔を出す太陽が。


海をキラキラ輝かせてた。


「美和、手袋は?」


「いいの」


コートのポケットに入ってる、龍矢の手を抜きだした。


「これがいい」


手袋よりなにより。


龍矢の手のぬくもりがいい。


この温かさが好き。