なんとなく、目の前が霞むのはなんでだろう?


頬になにか流れた。


手で触って、それが涙だってことに気づいた。


ばかだ、私。


こんなことで泣くなんて。


「春菜?」


「あっごめん。なに?」


「戸締まりと火、気をつけてな」


「わかってるよ」


声が震えないように、必死に我慢した。


泣いてるの、ひろ君に気づかれちゃだめだ。


ひろ君の電話から、弘樹まだ~?っていう、女の人の声がした。


その声に、今行くっていうひろ君の声も。


「じゃあ春菜。ごめんな」


「もう謝りすぎ。お酒飲みすぎちゃだめだからね」