甘え方を知らないわけじゃない。


小さいころは、いっぱい甘えてた気がする。


でもいつからか、甘えられなくなってた。


だからいつも、一人で大丈夫って。


ほんとは大丈夫でもなんでもないのに。


病気で寝てるときなんか、特に心細いのに。


一緒に居てって言えなくて。


泣きたくなるのを必死に我慢してた。


そんなとき、きまってひろ君が顔を出してくれた。


私が一人で大丈夫って言い出したのは10歳くらいで。


ひろ君は16歳。


高校生だった。


今よりちょっとだけ小さい手で。


「学校終わったら、来るからな。春菜はいい子だから、すぐ熱下がるよ」


まるで呪文みたいに、毎回同じこと言って。


私の髪をなでて、学校に行った。