「あたしにはね、7つ上の兄がいたの。
とってもいい兄だった。

あたしたちの母は
とてもだらしない人でね、ギャンブルや
お酒、借金本当にすごかった。
そしてすぐにあたし達兄弟に手をあげた。

でもね、その度兄が助けてくれた。
自分が身代わりとなって助けてくれた。
そんなとき父と母が離婚したわ。

あたし達は父に引き取られたの。
そしてすぐに再婚したわ。
再婚相手の連れ子が真姫ちゃんってわけ。

すごく幸せだった。これが家族なんだって
思えた。でも、そんな時兄が倒れた。
兄が高2の時だった。病名は…」

ここで紗姫は言葉を詰まらせた。

「病名は?」

俺はせかすように言った。

「病名は…癌だった。

すごく難しい場所にあって
手術は不可能だった。
あたしは毎日病院に通った。

〝おかえり、早かったね〟

って微笑みながら迎えてくれたわ。
でもね、日に日に弱っていくのが
手に取るようにわかった。

そんなとき兄はあたしにいった。

〝サッカーしてえな。
俺、サッカー選手になりたいんだ。
絶対負けない。負けてたまるか〟

ってそう言ったのよ。
その2日後だった。兄が逝ったのは…」