「おう、嫌い。」

「何が嫌いなの?」

「この無限に大きな青空も、
吹き抜けていく爽やかな風も
悩みなさそうにぽっかり浮かぶ白い雲も
みんなみんな嫌い。」

俺はもうそんな無限に時間はないのに…

「ふ~ん…。」

紗姫は難しそうな顔をして考え込む。

「俺さ、心臓悪いんだよね。
だから運動会も走れなかった。
そんなときに限ってさ、空は
すっげえ晴れてんだ。
雨降れって祈っても一向に降って
くれないし。それがみじめで
しょうがなかった。」

「かっこわる!!!!」

はーっとため息を漏らして紗姫は続ける。

「まるで自分が悲劇のヒロインみたい。
あんたみたいな人、世の中に数えきれない
くらいいるんだよ。
でもみんな必死で生きてんの。
みんな怖いんだよ。治りたいんだよ。
走りたいんだよ!!!!夢持って闘ってんだよ!!」

「健全なお前になにがわかんだよ!!!
俺の…何がわかんだよ…」

思わず大きな声が出る。
零れ落ちそうになる涙を
ぐっと堪える。

「わかるよ!!!!わかるよ…」

そう言ったあと紗姫は
自分の兄のことを話し出した。