「でね、あたしとお姉ちゃん血繋がって
ないんだ。」
明るく笑う振りをしているが心の奥で
泣いているのがわかった。
「俺の前で嘘つくな。」
「え?あたし嘘なんか…」
「その笑い方むかつく」
くるっと方向を変えて歩き出す。
あんな笑い方をさせたのは俺なのに、
きつく言ってしまう。
みんな俺にあの笑い方をする。
母さんも親父もみんな。
そう、母さんにも、親父のも
そしてさっき紗姫にも
あんな笑い方をさせたのは俺が原因だ。
心配させまいと、自分に嘘をついてまで
作る笑顔。俺はあの偽物の笑顔に
いつの間にか敏感になってしまっている
ことに気づいた。
「ねえ待って!ちょっとあんた!」
聞き覚えのある声、紗姫だ。
「あんたじゃなくて龍希。」
さっきのお返しと言わんばかりに
何食わぬ顔で言ってみせる。
「龍希!ごめん!」
そう言ってがばっと頭を下げる紗姫。
「ぅおい!ちょっとお前!!」
慌てて顔を起させる。
「びっくりした?」
にやっと笑って俺を覗きこむ。