でも俺から探しはしない。

紗姫のことだから自分から
突然やってくる気がして
ならなかったから。

「龍希!バスケしよーぜ!!」

屋上のドアがガチャっと開くのと
同時に、皐月の大きな声がした。

「てか皐月、検診の時間じゃねーの?」

「もー注射ばっかで耐えらんないから
逃げて来た~!!」

「お前またかよー!!上原さんにキレられっぞ」

皐月は〝だって~〟と言いながら
近づいてきた。

「龍希なにしてんの?」

「たそがれ~」

「あっそ」

呆れ顔で返す皐月

「お前年上に向かってその口の
聞き方はなんだ?ん?」

そう言いながら皐月のほっぺたを
両手でひっぱる。

「しゅ…しゅひましぇん…」

「よし!!じゃあ、部屋に戻れ!」

「あい、ひぇかひぇはなひてひょ!!
(はい、てか手離してよ!!)」

「なんてー?」

「わかっひぇるくひぇにー!!
(わかってるくせにー!!)」