紗姫はその後〝帰るね〟と言って
俺の前から姿を消した。
今まで俺は逃げていたのだろうか
〝どうせ死ぬんだから〟
と、病気を理由に現実から
目をそらし続けていたのだろうか。
そんな考えが頭の中を駆け巡る。
自問自答を何度も繰り返す。
紗姫の話が衝撃的すぎて、考えが
まとまらない。
「紗姫ー…」
紗姫のことを考えた瞬間、俺の中に
一つの疑問が生まれた。
もしかして俺、あいつの一番
言いたくないことを言わして
しまったんじゃないのか?
「くっそー…。
俺、最低じゃん。俺の方が
何もわかってなかったんじゃねーか…」
激しい自己嫌悪に陥る。
俺にできるあいつへの唯一の報いは…