「紗希、うちに住めよ。
おばさんもさー。
俺、母ちゃんに相談するから。おばさんたちがまた仲良くなれば家に戻ればいいじゃんか。
なっそうしろよ。」


「もう決まったの。
ごめん、そんなこと言わないで…」

堰を切ったように泣き出した。


「ごめん…」


僕はかける言葉も解らず肩を抱いていた。

「寂しいよ…ずっと一緒にいたいよ。」


「俺、会いに行くよ。休みの日にさ。何回もいけないと思うけど、行くよ。」


「うっうっ」


「俺も急に言われてどうしたらいいか解らないけど、これで一生会えないわけじゃないだろ。
そうだ、毎日電話しようよ。そうすれば寂しくないだろ。なっ」


「なんで…なんでもっと早く言ってくれなかったの?
私ずっと待ってたのに、寂しかったのに。
侑ちゃんとずっと一緒にいたかったのに…」


「ごめん…」

それでも僕は言葉が続かなかった。

「ごめんね、困らせて。それだけ。
私もう帰るね。
じゃっ。」

そう言って涙を拭きながら彼女は走り去って行った。

僕は追いかけて抱きしめてやることさえもできなかった。

ただただ彼女の後姿を見つめ、座っているだけだった。

彼女の姿が見えなくなるまで…。

しばらく空の星を見上げていた。輝く星に彼女の涙が重なった。

僕はなんてちっぽけなんだろう。

失いそうになって初めて自分の気持ちに気づいた。


気持ちに気づいたのに彼女には何もしてやれなかった。


自然と僕の頬に涙が伝った。


僕の涙はあの星には重ねることができなかった。


ふっと横を向く。

さっきまでいた彼女はもういない。

握り締めたい手はもうそこにはなかった。


僕はやっと立ち上がることができた。


星空を見ながら家路に着いた。


涙を重ねる星を探しながら…。


彼女の部屋の電気は消されていた。


「ごめんね。おやすみ。」

とつぶやいて、僕は眠りについた。