彼女は一人ベンチの前で佇んでいた。

「よっ。どうした?」


「ごめんね。遅くに」


「別にいいよ。なんかあったのか?」


「うん。ちょと。」


「そっか、座って話すか。」

二人はを腰掛けた。

俯いたまま彼女はつぶやいた。

「あのね、私引っ越すことになったの。」


「えっ!」

文字通り時間が止まった。
彼女があまりにも遠くにいる存在に感じた。
こんなに近くにいるのに。

「親がね離婚するんだって。私お母さんのところに行くことになったの…。
だからもうあんまり会えないね。」


「えっ?なんで?
あんなに仲良かったじゃん。どうしたんだよ急に。」


「お父さんの仕事がうまくいかなくなって、ギャンブルにはまって借金が沢山あるんだって。
一度は話し合って仲直りしたんだけど、最近また、他にも借金があるってわかって…。」


「えっ何時からいなくなるの?」


「来週には…。」


「もう日にちないじゃん。
何でそんな急に…」

僕の理解の範疇を超え、言葉が続かない。

「私も急で驚いてるんだけれど。もう決まっちゃたんだって。
お母さん一人にできないし。私もどうしようもできないの。
侑ちゃん、悲しい…」

そう言って僕の腕にしがみついた。