初めての二人乗りだ。


今までに女の子を乗せたことは勿論ない。


初めてが紗希だとは思いもしなかった。



普段なら周りの目を気にする僕は不思議と二人だけの世界にいた。


今日の夕日が妙に眩しかったせいか、まるで僕たち二人だけを照らしているかのようだった…。



優しい時間が流れていた。



紗希の腕がゆっくりと僕の体を締め付ける。


それと比例して僕の胸は高鳴る。


彼女の体を背に感じてハッと我に返った。


「おっおいそんなにくっつくなよ。」



「だって怖いんだもん。しょうがないじゃん。」



「恥ずかしいだろ。」



「わかったよ…」



胸の鼓動が聞こえるんじゃないかと僕は焦った。


それを意識しだすとまた一段とドキドキとした。



かすかに彼女の鼓動が背中を伝ってきた。


僕は何故か心が少し落ち着いた。



「ねー?」



「ん?」



「侑ちゃんは彼女とかいるの?」

突然の質問だった。


「いや、いないよ。紗希は?」

自然と聞き返すことができた。


「いないよ。」



「ふーん。」



「あのさ…」



「おっ、もうすぐ着くぞ。何?どうした?」



「ううん、なんでもない。もうすぐ着くね。ありがとう。」



そう言って彼女の手は離れた。



「今日はありがとう。助かったよ。また明日。」



「うん、早く自転車直せよ。またな。」



そう言って僕は家路に着いた。


別れ際の彼女は俯いていた。


何か心に秘めているようだった…。