「‥‥うまい!」

彼はそう言って嬉しそうに笑うと、
残りのブラウニーをぱくぱくと口に入れた。



「これ、めっちゃうまい!
こんなの作れるなんて、すげぇよ。

これもらえるはずだった奴、絶対ソンしたな」


真面目な顔をしてそう言った彼を見て、
私は思わず笑った。


「良かった。
おいしいって言ってもらえて嬉しいです」



そう言って彼に笑い返した私は、彼にばれないようにそっと涙をぬぐった。

さっきまでとは違う涙が‥‥
ほんの少し、じわっと来ちゃったから。




彼は、別にチョコが食べたかったわけじゃないんだと思う。
チョコを渡しそびれて落ち込んでる私を、
彼なりに元気づけようとしてくれたんだよね。


言葉じゃなくても、それをすっごい感じるよ。