「ええ、ええ。分かっておりますとも。領主様に引き取られるなんて、この子は幸せでしょうよ」


お母さんはぺこぺこと頭を下げながら、またレオノーラを押し出しました。


「お母さん!? 私、領主様のところに行かなくちゃいけないの?」


レオノーラは驚いてお母さんにすがりつきました。

お母さんはレオノーラの目を見ずに、早口で言いました。


「領主様が妖精の涙と一緒に、お前もつけてくれとおっしゃったんだ。でもその代わりに大きなお屋敷も頂けるし、お父さんは領主様付きのお医者様に見てもらえる。もう糸紡ぎなんてしなくたっていい位のお金を下さるんだ」


「そんな……」


レオノーラは驚いて座り込みました。私までも売られてしまうなんて。


「レオノーラ、分かっておくれ。
お前が領主様のところへ行けば、お父さんは助かるんだよ。お父さんの大好きなクコ酒だって、瓶にちまちま買わなくていい。酒場の樽ごと買える。
領主様だってお前を可愛がって下さるよ。私たちはね、幸せになれるんだよ」


お母さんの優しい猫なで声が、頭の上から聞こえます。
お父さんやお母さんと別れなくてはいけなくて、私は幸せになれるというの?