「……お前が、妖精に愛でられた娘かい?」


お母さんの後ろから、低く嗄れた声がしました。


「え?」


馬車の中から、レオノーラよりも背の低い、腰の曲がったお婆さんが出てきました。

シワで半分埋もれた濁った瞳をキョロリとさせて、レオノーラを見据えました。


「ふん。この女の言った話は嘘じゃないようだね。この娘ときたら、妖精の匂いがぷんぷんするよ」


お婆さんは薄い唇をぐんにゃり曲げて言いました。その言い方はとても冷たくて、レオノーラはお母さんのドレスの裾をぎゅっと握りました。


「婆さま、あたしの話は本当でしたでしょう? あんな宝石を盗むなんて、どだいできることじゃあありませんやね」


お母さんはレオノーラをお婆さんの前に押し出すようにして言いました。


「よかろう。その代わり、約束を覚えているね? この娘はもらい受けるよ」


え? もらい受ける?


レオノーラは意味が解らずに、お母さんの顔を見上げました。