窓から差しこむ光が、黒く陰りだした頃でした。
遠くから、馬のいななきが聞こえました。併せてがらがらという、馬車の車輪の音が聞こえます。


まあ、馬車なんて珍しい。

レオノーラは耳をすませてみました。


あれれ? 何だか音が近くなっている気がするわ。

レオノーラは、ちょっと待っててね、とお父さんに言い、外につながる木戸をそっと開けて外を窺いました。


家の前の道の向こう、やはりこちらへ向かってくる馬車の姿がありました。


この先には山しかないのに、一体どうしたのかしら?


ドアの隙間からじぃっと見ていると、なんと馬車はレオノーラの家の前で止まるではありませんか。


ええ? どういうことなのかしら?


御者のおじさんが、馬車の扉をかちゃりと開けると、中からお母さんが降りてきました。


「お母さん!」


レオノーラはドアをばんと開け、馴れない馬車からよたよたと降りるお母さんに飛びつきました。


「驚いたわ、お母さんどうしたの? こんな馬車に乗って帰ってくるなんて」