お母さんが出て行って、レオノーラはお父さんのベッドの傍らに座り込みました。

怪我のせいで熱がでて、苦しそうに唸っているお父さんの額に浮かぶ汗をせっせと拭きました。


「お父さん、待っていてね。すぐにお母さんがお医者さんを連れてきてくれるからね」


しかし、窓に夕日が差し込む頃になってもお母さんは戻ってこず、お医者さんも来ませんでした。


お母さん、一体どうしたのかしら。


もう何回目になるか分かりませんが、たらいの水を冷たい井戸水に変えながら、レオノーラは領主様のお屋敷のある方向を見ました。


領主様は会って下さらなかったのかしら。宝石は買ってもらえなかったのかしら。


冷たい井戸水で絞った布でお父さんの顔を拭きながら、レオノーラはやきもきしていました。


お母さん、早く。早く帰ってきて……。