「ああ、そうしよう。
アタシはこれから領主様に会ってくるよ。領主様ならこれを目が飛び出る位のお金で買い取ってくれるだろうからね」


「領主様に?」


レオノーラは驚きました。領主様なんて、お祭りの夜に遠くのお席につかれているのを見かけただけの、高貴なお方です。

そんな方に会いに行くなんて。


お母さんは手持ちのドレスの中でも一番上等な繻子のドレスを着て、髪の毛を綺麗に結い直しました。
お嫁にくるときに、お祖母さんがくれた古いカメオのブローチを胸に留め、唇にうっすらと紅を差しました。


高貴な方に会うには、身なりを整えないといけないのです。すっかり身綺麗になったお母さんは、カメオのブローチが入っていた、ビロード張りの小さな宝石箱に妖精の涙をそっと入れ、大切そうに胸元に隠しました。


「行ってくるからね。しっかり留守番をしておくのだよ」


レオノーラはこくんと頷きました。