「困る? どうして?」


首を傾げた妖精に、レオノーラはどうしてここに来たのか話しました。


「手ぶらで帰れば、お母さんはきっと、ものすごく怒るわ。ああ、どうしよう」


でも、こんな可愛らしい妖精さんが生まれる花と聞いてしまっては、レオノーラに摘める訳がありません。


「ううん、仕方ないことですもの。
明日、お母さんにきちんと謝って、許してもらうわ」


そんなレオノーラに、妖精はにっこり笑いました。


「安心して。あなたに、これをあげる」


妖精は、先程自分が生まれた花、もうすっかり枯れてしまっていましたが、その花びらの中から小さなものを取り出しました。


「私を摘まないでいてくれたお礼よ。これを売るといいわ」


それはレオノーラの小指の先くらいの真珠色の石でした。


「これはね、花びらの中に溜めていた夜露で出来てるの。妖精の涙っていう宝石なのよ。
これを売れば、きっとお金になると思うわ」


「まあ。ありがとう!」


レオノーラは嬉しくて、妖精のくれた宝石を握り締めてお礼を言いました。


「私、絶対言わないわ。この場所のことは、一生秘密にする」


「ありがとう。じゃあ、約束ね?」


妖精はそう言って笑いました。