「ありがとう。構わないから、見ていてちょうだい。私も、一人で不安だったのよ」


月乞草は、嬉しそうな声で言いました。


「見て。あの満月の光が湖の真ん中に来た時、私は妖精になれるの」


「まあ、すごいわ。でも、何で分かるの?
妖精に生まれ変わるのは、初めての事でしょう?」


「それはね、私よりも先に妖精になった、お姉さんたちが教えてくれたの。
今はみんな、この森の向こうの妖精の国に行ってしまっているけれど。私が妖精になって、やって来るのを待ってくれてるのよ」


月乞草は誇らしげに言いました。


空には、柔らかなクリームの光の月がゆっくりと、湖の真上に差し掛かろうとしているところでした。


「あと、もう少しね」


レオノーラはゴクン、と唾を飲み込むと、じいっと湖の中央を見つめました。

ゆらゆらと、水面が揺れだしました。

木々の間から、風がひゅう、と吹きました。


「もうすぐ、真ん中にくるわよ」