亜姫は牛乳を飲む子猫の頭を撫でた。

また、ひとりになっちゃうな。

「可愛がってもらうんだよ」

あんなのでもちょっとはいい奴かもしれない。

先輩と話せたし。
猫、引き取ってくれるし。

「ひとりが寂しいならなんで一人暮ししてんの?」
「…あんたって人は」

ちょっとは見直したと思ったのに。
不法侵入もいいとこだ。

「好きでひとりなわけじゃないわ」

あたしがまだ小さかった頃、事故で亡くなったの。

それに。

「ひとりには慣れてるわ」

亡くなる前だって、まともに構われた記憶がない。
あたしは、ずっとひとりだった。

「お前、今自分が可哀相な奴だと思ってるだろ」

見苦しいぞ。

「ひとりは慣れてるなんて言うんじゃねぇよ。ひとりで生きてる奴なんていねぇんだ」

あたし、なんでこいつに説教されてるんだろう。

「あたし…」

寂しくない。

「今は友花梨だっているし…」

だって。

「あたしは…」

ひとりは寂しいって認めてしまったら、本当に世界中でひとりぼっちになる気がして。

「寂しがり屋が平気ぶるんじゃねぇ」

バレバレなんだよ。

あいつと、同じ目しやがって。

「今日一緒に寝てやろーか?」
「いらない」

返事がはえーよ。

「春樹ならいいってか」
「!?」

だから、バレバレなの。

「お前って、自分で思ってるよりもわかりやすい性格してるぞ」

言っとくけど、あいつには彼女がいるんだからな。

「知ってるわよ」

しかも。

「可能性ゼロだぞ」

あいつらバカップルだからな。

「別にどうにかなりたいと思ってるわけじゃない」
「じゃあなんで」
「あんたなんかに繊細な乙女心はわかんないのよ」

いやいや。

「お前おかしいぞ」

それって、ただお前がつらいだけじゃん?

「幸せになりたくねーの?あいつを好きでいる限り、お前ぜってー幸せになれねーよ?」

なんで。

なんで、そんなわかりきってる結論を出すのよ。
駄目押ししないでよ。

先輩を好きな気持ち、否定しないで。
あたしの気持ちを、否定しないで。